| (32)涙なしでは語れない兵役体験〜弟子はもっぱら慰め役 |
番組名:伊豆伊東のゴルフ物語 |
更新日(2019/01/19)

全日空が主催する札幌のゴルフトーナメントは、創始以来45年の歳月が流れているが、第2回大会でオールドタイマーの模範プレー披露という企画があった。創設当初は航空会社の大会だから、スチュワーデスにユニフォーム姿でコースの案内役をお願いした。大会2年目に、もう少し工夫をこらした企画はないか、ということになり、マスターズトーナメントに倣ってベテランプロの模範プレー披露の企画が出た。最終日の第一組スタートの前でプレーしてもらうことになり、選ばれたベテランプロは宮本留吉、安田幸吉、浅見緑蔵、陳清水の4人だった。
その前夜、全日空広報部の配慮で歓迎の宴が開かれ、ベテランプロたちの、同窓会のような雰囲気になり昔話に花が咲いた。安田幸吉の徴兵検査の思い出、陳の程ヶ谷での修行時代、浅見の兵隊時代、宮本は昭和7年の英国遠征を語ったが、涙を誘ったのは浅見の兵隊時代だった。
浅見は当初、徴兵検査の末、海軍入隊の予定だった。ところが鳩山一郎(文部大臣)の配慮で陸軍になった。兵役年限が海軍より1年短く、早く除隊になり、ゴルフ界に戻って来いという鳩山の配慮だった。
浅見の思い出はこうだった。昭和5年、アメリカからウォルター・へーゲン、ジョー・カークウッドが来日し、東京、大阪で模範プレーを披露した。兵役に服している浅見は朝香宮鳩彦殿下(陸軍大将)の配慮で軍服姿のまま、観戦を許された。人目を避けるように観戦したが、とめどもなく涙が流れた。本来なら自分が出場の立場にあったのに・・・。
『二度とゴルフはできない』
この段になると大柄な浅見は、人目をはばからす大声で泣きじゃくった。慰め役は陳清水。それもそのはず、陳は浅見の弟子だったからだ。
《写真・全日空札幌オープンの余興・模範競技で昔ながらのファションでコースに立った4人のオールドタイマー》
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