(60)昭和天皇の紛失球?〜事務所に保管されているボール |
番組名:取材メモ・写真に見る日本のゴルフ史 |
更新日(2022/03/08)

東京都民のオアシスとして知られる新宿御苑には、かつて皇族方専用のゴルフ場(9ホール)があり、その面影は今に残る。ゴルフコース誕生のきっかけは、昭和天皇がゴルフを愛好され、東京・駒沢にあった東京ゴルフ倶楽部のコースを何度となく訪問されたからだが、警備の面などの問題があり、専用のコースの建設が求められていた。そこで東京都心にある新宿御苑がコース建設用地の候補に上がり、大正の時代に入りゴルフ界の長老、大谷光明の設計で、コースが完成した。この土地はもともと長野の高遠藩主・内藤家のものだったが、廃藩置県を機に内藤家から国に返還され、農場試験場になった歴史がある。1906(明治39)年に新宿御苑として皇族専用の庭園になり、国が管理してきた。以前のことだが環境庁の管理のもと、池を含む広大な土地を大掃除したことがある。すると、園内の池の中からゴルフボールが見つかった。ボールは昭和初期に製造されたものだが、かつて皇族専用のゴルフ場だったという経緯から、昭和天皇がお使いだったボールではなかろうか、と思われた。
しかし、昭和天皇がお使いだったものという証拠はなく、管理事務所は発見以来、今日まで大切に保管してきた。
昭和天皇はご結婚後、皇后さまとお揃いで御苑のゴルフコースを訪問されているが、皇后さまの方がスコアはよかったと伝えられている。御苑のコースは戦時中に消えたが、皇族方以外には宮内省の関係者が利用していた。名前入りのボールだったら、持ち主はすぐ分かるが、その時代には名入りボールを使うこともなく、持ち主不明のままで古い時代のボールとして保管されている。ゴルフの歴史を後世に伝える材料として、残しておきたいものだ。
《写真・新宿御苑の事務所に保管されている古い時代のゴルフボール》
|