(31)自動車の副賞をもらったプロ |
番組名:取材メモ・写真に見る日本のゴルフ史 |
更新日(2021/06/15)

日本のゴルフ界では、いまプロのトーナメントが花盛りだ。賞金のほか、副賞に乗用車が提供されるのは珍しいことではない。プロの競技といえば1950(昭和25)年代は男子競技のみだった。そんな時代のプロゴルフの競技で脚光を浴びたのはマスコミが主催した大会だった。読売新聞社が100万円賞金のトーナメントを開き、キャッチフレーズは『ワンパット30万円のスリル』だった。優勝と2位の賞金差を誇張した言葉だった。次いで中日新聞の中部日本招待アマプロトーナメント(現在の中日クラウンズ)が生まれ、現在に至っている。ここで話題になったのは副賞の乗用車だった。
プロに贈った乗用車といえば、まず1957(昭和32)年の秋に霞ヶ関カンツリー倶楽部で開かれたカナダカップ。中村寅吉が個人、団体を制覇してゴルフ界は沸いた。そこで自動車メーカーの日産が中村にダットサンを贈った。乗用車の下半分は緑。上半分が黄色という色分けだった。中村は緑のスラックスに黄色い長袖のシャツがお気に入りで、メーカーはその色分けに着目したのだ。
中村は車をもらってから運転免許を取得した。月例競技会には車で出かけた。すれ違いにくい細い道で、対向車のドライバーに『俺は中村寅吉だ。運転は素人だから。俺の車を動かしてくれないか』と事故防止に神経を優先していた。
トヨタが協賛している中日クラウンズは、優勝賞金のほかに副賞に小型乗用車を提供した。初めて手にしたのは富戸出身プロ石井朝夫だった。石井は自動車の免許取得が早く、運転が好きだった。おまけにスピードの出る車が好みらしく、すぐ馬力の強い車に買い替えたそうだ。
《写真・副賞の乗用車を受けた石井朝夫〜中日クラウンズ》
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