(52)皇太子の砂 |
番組名:取材メモ・写真に見る日本のゴルフ史 |
更新日(2021/12/26)

今日のゴルフは年齢を問わず、だれでもいつでも気軽に楽しめる。だが、現在のように普及していなかった時代は、おいそれと手軽には楽しめなかった。第一、用具のお値段が高く、ゴルフ場の会員になるとしても高額だったし、日本にはアメリカやイギリスのような安価にしてだれしも手軽に活用できる設備がなかったからだ。
ゴルフ用品のお値段は今日、普及の度合いに比例して求めやすくなっているが、いつの時代においても、安いお値段で購入できた用品といえばティーショットに使う『ティーペッグ(球台)』だった。それは木製で使いやすくお値段の安い用品だ。木製のティーが無かった時代は、付き添ったキャディーが砂と水を持ち運びながら、プレーヤーが指示する場所に水で練った砂を盛り、その上にボールを乗せた。いわゆる砂のティーのことで日本のゴルフ界も大正の時代はそうだった。
プロゴルフ界の長老だった浅見緑蔵は、その時代のことをこう話していた『オイ。小僧。ここだ』とゴルファーがプレークラブヘッドの底でティーの表面をトントンと叩くと、キャディーはそこに砂を盛り、ボールをその上に置きました』
以前のことだが、スコットランドのゴルフショップで英国のプリンス、ウィンザー公(1894〜1972)が使った小瓶に入った砂とボールが店頭に陳列されていた。小瓶に入っている砂だったが、ティーペッグが開発される以前は貴重品だった。ティーは1890年代に入ってゴム製のティーが開発され、さらに針金のティーが出回ったが評判は芳しくなかった。木製のティーが出回り始めウォルター・へーゲンが愛用したのが評判となり、いまは木製のティーペッグ全盛期だ。
《写真・ウィンザー公愛用の砂を入った小瓶とボール》
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