2018/03/09
中国のゴルフ事情
戦前のことだが、多くの日本人のゴルファーたちは現在の中国大陸、旧満州や朝鮮半島に多くのゴルフ場を造り、ゴルファーの組織化を図ってその普及、発展に大きく寄与している。だが、太平洋戦争を境に、大陸におけるゴルフ情勢は一変し、戦前に日本人が関わったゴルフ場はことごとく消えた。残された古い書籍やゴルフ専門雑誌などでかつての繁栄を知るのみだ。
しかし、中国大陸の北京市郊外に日本の企業が会員制のゴルフ倶楽部を創設した。つい30年ほど前のこと。1986(昭和61)年に開場の北京国際CCという18ホールのチャンピオンコースだった。国元首の要人も会員として名を連ねていた。
しかし、最近の中国におけるゴルフ事情は、かつての成長ぶりは見られない。北京国際CCが創設されて以後、中国におけるゴルフコースの数は600を超えていたが、2年ほど前からゴルフ場の新設は禁止されている。
2014(平成26)年から2年間、中国に駐在し、中国のゴルフを実際に眺めてきたAさん(仮称)(57)に中国ゴルフの側面を語ってもらった。この方は現在日本のゴルフメーカーで勤務しておられる。
『中国で勤務したのは2年という短い期間でしたが、その間、クラブ、ボールや用品の現地での販売を担当していました。赴任した当初は全土に600余りのコースを数えていました。ゴルフ大会も盛んに行われていて、その成長ぶりはすざましいの一言でした』
Aさんは中国に駐在していた間、各地のゴルフ場を訪問した。
『中国のゴルフは基本的にスループレーで一人ひとりにキャディが付き添いバッグの運搬はカートで行っています。男女のプロも育っていますし、グループ単位のゴルフ大会も盛んでした。中国の全土を統括する中国ゴルフ協会も機能しています』
その成長ぶりは、かつて日本人が大陸にゴルフコースを設けた時代を凌駕する勢いだった。ところが政府の方針が変わってからというものは、ゴルフに対する風向きも変わった。世界的に問題になった“上海ショック”の影響もさることながら、政府は環境の保全、土地の有効活用などなどを理由に、ゴルフ場の新設は困難になり、全盛期の630コースのうち、100コース以上が閉鎖に追い込まれているという。
さらに中国におけるゴルファーは高級官僚たちが多く、土地の取得にからむ汚職も問題視されている。《爆買い》といわれる中国の観光客の存在は、しばし話題になるが、ゴルフは一般庶民にとっては手が届かない高嶺の花のようだ。中国における1回のプレー費は、食事なしで日本円にして1万5〜7千円ほど。
中国におけるスポーツは卓球、バドミントン、テニスが一般的だが、中国のゴルフ界は2年後の東京オリンピックでどう乗り出して来るやら。いわれてみると北朝鮮にも日本人の創設によるゴルフ場があった。隣国とはいえ、その存在が気になるところだ。